「狭小邸宅」を読んで胃が痛くなった件
こんにちは。
この前久しぶりに小説を読んで、それが結構面白かったので紹介をしたいと思います。
自分が読んだのは「狭小邸宅」というものです。
※ネタバレ要素は割とあります。
「狭小邸宅」に出会うきっかけ
普段ビジネス書とか新書ばかり読んでる自分が小説を読むというのは結構珍しいんですが、読もうと思ったきっかけはネットで見つけたフレーズに惹かれたからなんです。
「いや、お前は思っている。自分は特別な存在だと思っている。自分には大きな可能性が残されていて、いつかは自分は何者かになるとどこかで思っている。俺はお前のことが嫌いでも憎いわけでもない、事実を事実として言う。お前は特別でも何でも無い。何かを成し遂げることはないし、何者にもならない」
— 狭小邸宅bot (@kyosho_teitaku) 2016年8月26日
これ上司に詰められてる場面なんですけど、読んだだけで「うっ」と胃に来る感じがしますよね。
実際は最初にこのフレーズを知ったのはこのツイートじゃないどこかなんですが、この短い文章で上司にゲキ詰めされる臨場感が味わえるのはすごいな、と思い検索してみたら見事「狭小邸宅」に行き着いたわけです。
僕は昼ドラとかも好きですし、久しぶりにこういう歪んだ世界を体験して思わずゾクゾクしちゃってその場でポチってしまいました。
で、実際に内容も胸糞悪い話で個人的には大満足でした。
「狭小邸宅」のあらすじ
主人公は売れない若手不動産営業マンです。
ノルマが厳しくろくに休めず、上司から日々暴言暴力を受け続けるという最悪な環境で「今日こそ辞めてやる」と言っているところから物語は始まります。
最初はひたすらブラックな労働環境と全く成果をあげられず苦しむ日々の描写が続きます。
ある日、あまりにも成果が上がらないことから強制異動で支店が変わりますが、その後も全く成果が上がりません。
その結果、上司からど詰めを食らい、ついには「辞めてしまえ」ということを言われます。
その後、「残り1ヶ月だけ頑張る」と覚悟を決めて全力で仕事に臨んだ結果、社内の最重要案件を成約させてしまい、それがきっかけで右肩上がりで成果を上げ続け社内でも一目置かれる存在にまで成り上がります。
ただ、仕事での成功は本人にとって良いことづくめとはいきません。
不動産営業にのめりこむあまり人格が歪んでしまった結果、仕事のために恋人をおろそかにして愛想をつかされたり、大学時代からの友人と掴み合いの喧嘩をしてしまったりと人間関係のトラブルが続きます。
それでも彼は次の案件を成約させるためにひた走る、というところで物語は終わります。
「狭小邸宅」の感想
読後感とか読んでる途中の胸糞悪さとか全部含めても全くハッピーな気分になる箇所がありませんでした(笑)
でも、そういうものを期待していたので個人的には非常に面白く読めました。
特に、異動先で上司に詰められるシーンが圧巻でした。
自分の中を見透かされてるような鋭くて冷たい言葉の応酬に、自分が詰められてるわけじゃないのに勝手にグサグサやられてる気持ちになりました。
また、仕事で成功する代わりに多くの代償を払っていて素直にサクセスストーリーにしないあたりも絶望感があって良かったです。
この不動産営業の世界では仕事ができなくても救われないし、できるようになるには代わりに大きなものを失うことがある、という構図なのでその世界から脱出しない限りはどうあがいても絶望なんですよね。
仕事での成功とか名誉のために魂売っちゃうと別のところでガタが来るんだろうなと感じましたね。(色々振り返ると自分もやや思い当たる節があるのが辛い^^;)
何のために仕事するのか、生きがいややりがいって何なのかということを考えるきっかけになる面白い小説でした。
ただ、間違えても仕事のモチベが低い時とか弱ってる時に読むのは避けたほうが良いですね。
普通に会社に行きたくなくなると思います^^;笑
おしまい。